日本映画ビジネス基礎講座 1 /ゼロイン・コラム
ヒットしているか否かを、イメージだけで判断してはいけない。
「日本映画は本当に儲かっているのか??」
斉藤守彦 on zero-in
2008年は、またしても日本映画が外国映画のシェアを上回ることになりそうです。と言うと、いかにも日本映画が立て続けに大ヒット作を連発しているように聞こえますが、今年の場合、外国映画に大ヒットと形容出来る作品がない。これが大きな原因です。つまり「日本映画が強い」のではなく「外国映画が当たらない」というのが実情。試しに興行成績を上げてみますと、日本映画のベスト3が「崖の上のポニョ」(興収155億円見込み)、「花より男子ファイナル」(興収77億円)、「劇場版ポケットモンスター・ギルティナと氷空の花束シェイミ」(興収47億円)。これが外国映画になりますと、「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(興収57億円)、「レッドクリフPartI」(興収45億円見込み)、「アイ・アム・レジェンド」(興収43億円)という顔ぶれになります。
外国映画は、2006年に日本映画にシェアを逆転され(21年ぶり!!)、翌07年には「パイレーツ・オブ・カリビアン」「ハリー・ポッター」シリーズの新作のおかげで盛り返しましたが、今年はいささか絶望的。来年1月末に、日本映画製作者連盟が発表する「2008年映画概況」は、「またしても日本映画が有利に」といった見出しが並ぶことでしょう。
「日本映画が、今儲かっている」なんて本を書いた御仁もいましたが、「当たる」ことと「儲かる」ことは、いささが次元が違います。企業で言えば「収入が上がること」イコール「利益が上がること」ではありませんから。
今年は「崖の上のポニョ」のように、興行収入100億円を超え、歴代ヒット作の上位に名を連ねる日本映画の大ヒット作は、確かに現れています。しかしそれは、限られた要因が有効に作用した結果そうなったのであり、公開されるすべての作品がヒットしているわけではありません。
例えば、最近「櫻の園」という映画が公開されました。松竹と大手芸能プロダクションのオスカー・プロモーション、テレビ朝日が中心になって製作委員会を組成した作品です。この作品で映画製作に本格参入するかまえのオスカー・プロは、実に100を超える企画の中からこの作品をチョイスしたと言います。「櫻の園」は、1990年にアルゴ・プロジェクト(現アルゴ・ピクチャーズ)が製作し、その年の映画賞を多数受賞した作品です。そのリメイク版を製作する。なぜそういった選択をしたのでしょうか?もしかしたら「当時賞をたくさんとった作品だから、知名度もあり、きっとヒットしたに違いない」という判断をしたのではないでしょうか?
映画賞の類は、確かに作品のクォリティの証明にはなりますが、一般的に言って映画評論家が選ぶ賞やベスト・テンの結果は、ストレートに観客動員には結びつかないケースが少なくありません。1990年当時、僕は映画業界紙の記者をしていて、アルゴ版「桜の園」の記事も書きましたが、その時のアルゴは全国規模の興行網を持っていませんでしたから、いくら受賞が話題になったとしても、上映した映画館の数は知れていて、配給収入も1億円かそれ以下(現在の興行収入に換算して、約2億円)と思われます。そうした現実を、さてリメイク版を企画・製作した関係者は、どの程度考慮したのでしょうか?ビジネスとして、精査したのでしょうか?もししたとしたら、このコケっぷりはどういった理由によるものでしょうか?都内は2週間で上映が打ちきられることになりました。
映画ファンドの登場もあり、映画に対する投資を積極的に行う企業・個人が増えてきました。しかしながら、出資者からは不協和音が聞こえてきます。その根源には、映画という華やかな文化商品的イメージに酔い、ビジネスとしての視点を忘れた結果、当初の目論見を達成できなかったケースが、実に多いのというです。
このコラムでは、そんな“一見華やかに見える”映画産業の、ありのままの姿をとらえ、私の知る限りの事例やパターンと共に、伝えていこうというものです。よろしくおつき合いのほどを。



